今回はBIMについて現実的な話をちょっと考えてみましょう。世間ではビム、ビムと言っていますが、「BIMって本当に儲かるの」という話です。その前に、そもそも儲かるとはどういう事でしょうか。儲かるとは売上がUPするということですから、何パターンか考えてみましょう。
- 価格を上げる
- 販売数が上がる
- 原価が下がる
- 付加サービスの提供
a.価格を上げる の場合、単純に売れる個数が一緒でも、価格を上げれば売り上げはUPします。例えばパン屋さんで例にとると、定価100円のカレーパンが1日100個売れていたとします。 カレーパンの売上をUPしたいので、ちょっと肉の質を上げて単価を100円から150円に上げました。原価も50円から75円になったけれども、味が美味しくなって値上げしても1日の販売個数は100個で変わらなかった。 とすると、儲けは以前の(100-50)×100=5000円から、(150-75)×100=7500円となり、2500円以前より儲かったことになります。
これをBIMに置き換えると、残念ながら現状ではBIMで設計したからと言って設計料がUPしたり、BIMで施工したからといって工事金額がUPするということは無いようです。 発注者は今まで通りの設計でしようと、BIMで設計しようと満足する成果物ができれば良いですし、建物も希望の要求通りに建ったらOKなので、BIMで作ったからといってあえて金額を上乗せすることは無いのが現状です。 反対にBIMですることによって、手間がかかったりすれば、原価がUPしますから利益が減る、儲からないということになってしまいかねません。 このことがBIMに抵抗がある人がよく言う、「今までのやり方とBIMとどっちが早いか。時間ばっかりかかってたら、よけい損やないか」ということになります。
b.販売数が上がるの場合、単価は同じでも数が増えれば儲かることになります。 先ほどの例で行くと味を美味しくすることによって1日の販売個数が100個から300個になったとしたら、 儲けは(100-50)×100=5000円から、(100-75)×300=7500円となり、2500円以前より儲かったことになります。
では、BIMで設計や施工を行うことにより、受注件数は増えるでしょうか。現状ではまだ少ないと思います。現状では発注者側もBIMのメリットよりも、坪いくらになるかといった金額面が重要視され、BIM指定で発注ということはまだまだ少ないです。 しかしながら、外資系の企業や、一部のメーカーやデベロッパー、物流倉庫などでBIMの有効性を認識された企業が、BIMでの発注というケースも出てきています。今後はBIM発注の物件が増えることは期待できます。
c.原価が下がるの場合、売上が変わらなくても原価が下がれば当然儲けも増えます。先ほどのパン屋さんに例えると、カレーパンの味は変わらないが、新しく導入した機械で手間が半分になった。 売上個数は変わらないが、原価が半分になったという事で、儲けは(100-50)×100=5000円から、(100-25)×100=7500円となり2500円儲かったことになります。
これをBIMの現状に例えると、今までのやり方とBIMのやり方と比較しますと、必ずしも手間が減るといった状況には無いと思います。現状では現在のスタッフが、建築の経験値や、今のソフトの熟練度などで、 BIMを使う事よりも現状のやり方でやった方がスピードという面では上だと言えるかもしれません。しかしながら、将来の5年先や10年先にはBIMソフトの方が得意とする社員の増加や、BIMソフトの機能の向上、 社内のBIMルールの整備などによって生産性が上がり逆転する可能性も大いにあります。
d.付加サービスの提供の場合、これは、商品そのものの儲けは変わらないが、それに付加するサービスや商品が生まれ、そこで儲けが発生するというものです。パン屋の例を取ると、カレーパンの香辛料が変わって、 それによく合うジャスミンティーとセットにして販売すると良く売れたということです。
これを、BIMで考えるとFM(ファシリティマネジメント)が考えられます。FMとは建物の維持管理技術のことです。従来、発注者は建物が建つまでのコストは気にしていても建った後のコストは気にしないという傾向です。 しかし長期的には建てた後のコストの方が建てる費用より何倍もかかります。日本では従来軽視しがちな維持管理業務を、FMを駆使することよって、費用を削減することができます。 詳しい話は省きますが、このFMを行うのにBIMが有効活用できます。 BIMで建物を建てることにより、発注者側にFMの有効性を訴え、FMシステムの提供というサービスが生まれれば、そこに収益が発生することが期待できます。
以上、述べたことを考えてみますと、現状ではBIMで設計や施工を行っても儲けはあまり期待できないかもしれません。しかしながら将来的には下記のグラフのようにBIMソフトの熟練者の増加や、BIMソフトの機能の向上による生産性の向上(原価が下がる)、 BIM発注の増加、またFM市場の拡大により、利益を増加させることが大いに期待できるかもしれません。
